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大阪地方裁判所 昭和43年(行ウ)597号 判決

原告 住田清三

右訴訟代理人弁護士 花房節男

同 福井直

同 小西正人

同 花房秀吉

被告 大阪市長 大島靖

右指定代理人 森三郎

〈ほか二名〉

主文

一  被告は原告に対し、金四、四五五、一五七円およびこれに対する昭和四三年四月二一日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は各自の負担とする。

事実

第一、当事者の求めた裁判

(原告)

一  被告は、原告に対し、金八、四六五、四八五円およびこれに対する昭和四三年四月二〇日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

旨の判決並びに仮執行の宣言

(被告)

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

旨の判決

第二当事者の主張

一、請求原因

1  原告は別紙物件目録記載の土地(別紙図面(一)のイロハニイの各点を順次直線で結ぶ部分、以下、原告所有地という。)を所有するところ、右土地のうち別紙図面(一)のイヘチニイの各点を順次直線で結ぶ部分(以下、本件土地という。)その他を用地予定地とする大阪都市計画街路事業加島天下茶屋線建設工事(以下、本件事業という。)につき、被告を執行者として、昭和三五年八月八日建設省告示第一、五六七号により大阪都市計画街路事業決定およびその執行年度割の決定があり、その後昭和四〇年三月三一日建設省告示第一、〇四四号および昭和四二年三月三一日同告示第一、二三〇号により執行年度割の変更がなされ、同年二月二七日土地細目の公告がなされた後、原、被告間で協議がなされたが成立しなかったので、被告は同年一一月二四日大阪府収用委員会に収用裁決の申請をなし、同委員会は昭和四三年三月二七日、収用する土地の区域本件土地、原告に対する損失補償額七、〇九八、五二六円、収用時期同年四月二〇日とする旨の裁決をなし、その裁決書正本は同月四日原告に送達された。

右裁決において、損失補償額を七、〇九八、五二六円とした算出根拠はつぎのとおりである。

(一) 土地損失補償金 七、〇二四、九六〇円

収用面積 四六・四平方メートル

一平方メートル当り単価 一五一、四〇〇円

算式 151,400円×46.4m2=7,024,960円

(二) 残地の盛土費用の補償 七三、五六六円

都市計画街路加島天下茶屋線築造後の歩道面と残地(別紙図面(一)のロハチヘロの各点を順次直線で結ぶ部分、以下、本件残地という。)面との高低差八〇センチメートル(平均値)を高上げするための盛土費用(但し、一切の工事費用を含む。)

実測面積 二四五・二二平方メートル

一平方メートル当り単価 三〇〇円

算式 300円×245.22m2=73,566円

2  土地収用に伴う損失の補償は完全でなければならない。すなわち、収用によって生じた損失はすべて補償せられ、各損失に対する補償の額はその損失を全部補うに足りるものでなければならない。そして右損失のなかにいわゆる起業損失を含むことは、土地収用法九三条の趣旨に照しても明らかである。

3  ところで、原告所有地はもと大阪市内の商業地にあって、その西側は公道に接する効用の高い宅地であったが、本件収用により西側を剪除されたうえ、本件事業施行の結果、別紙図面(二)のとおり常安橋架橋によって加島天下茶屋線は従前の道路より高くなり、また土留擁壁のため本件残地は直接公道(加島天下茶屋線)に面しなくなって、わずかにその側道(巾員二・八メートル)にのみ接する画地となった。そして右側道(歩道)には電柱が本件残地と二・一メートルの間隔で数本設置されているうえ、常安橋寄り交差点手前において急傾斜の階段が連なる。

4(一)  原告は原告所有地上に、原告の経営する株式会社住田式自動電機製作所の商品(自動扉)の展示場および事務所兼居宅の建物を建築すべく、昭和三六年四月五日建築主事に対し建築物確認申請をなし、同年五月二日ごろ確認を受け、着工を待つばかりの状態であった。

しかるに本件事業施行の結果前記公道(車道)から本件残地に車両を乗り入れるには、本件残地の北に隣接する朝日工業社前付近から前記側道(歩道)に入り、歩道を約七メートル進行しなければならないところ、前記のように側道が狭いうえ、電柱に妨げられて、車両の進行、荷物の積卸し等の作業に著しく支障を来たし、また前記階段に妨げられて南方に向かい側道を通り抜けることも不可能となったため、自動車運行を不可欠とする前記営業環境としては極めて劣悪なり、また、前記土留擁壁によって観望を遮られることになったため展示場として使用することも著しく制約を受け、結局原告において前記建築および同所における営業を断念することを余儀なくされた。

(二)  前記のように本件事業の施行によって本件残地の環境が劣悪化したため、本件残地を他に売却するにしても、その対価は著しく減額されることになることは明らかである。

(三)  右のような損失は社会通念上受忍すべき範囲を越えるものである。

5  本件残地の商業地としての効用(収益性、便利性)を別表の個別的要因につき、本件事業施行前の状態における利用価値と比較してみると本件残地の全体効用減価率は二三パーセント以上であることが認められる。

そうすると、本件収用がなければ本件残地の価格は三七、一二六、三〇八円(一平方メートル当り一五一、四〇〇円は裁決額どおり)であり、本件収用によって本件残地の効用が二三パーセント減少したので、金八、五三九、〇五一円が右残地の損失に対する補償金額として相当である。

(算定) 151,400円×245,22m2=37,126,308円

37,126,308円×0.23=8,539,051円

6  よって、本件残地に対する損失補償額は八、五三九、〇五一円であるから、原告がすでに受領した本件残地の盛土費用としての裁決額七三、五六六円を差し引いた八、四六五、四八五円ならびにこれに対する収用期日である昭和四三年四月二〇日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  答弁および反論

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2について、法七四条に規定する「収用による損失」とは、収用による権利の剥奪または制限に起因する損失を意味し、収用の目的である事業の施行の結果生じる損失いわゆる起業損失は含まないというべきである。右のことは、起業損失を含むとすれば、収用裁決時には未だその損失の範囲が確定的に把握し得ないことになって不都合である一事をもってしても明らかである。

また仮に起業損失を含むと解するにしても、起業損失が起業利益に対比される観念であり、残地補償が被収用者における特別の事情に対する損失の補償であることを考えれば、事業の性質上付近一帯の土地の価値が総体的に低下することが予想される場合に限り、その範囲で残地価値の低下による損失が補償されるにとどまるべきである。そして本件のような都市計画街路事業としての道路建設事業はその性質上右のような起業損失を生じることはあり得ない。

3  同3の事実のうち、本件事業施行の結果、従前西側を公道に面していた原告所有地は西側部分を収用され、しかも加島天下茶屋線は従前の道路レベルより高くなったうえ、車道部分と歩道部分との境界上に土留擁壁が施設されたため、本件残地は直接公道(車道)に沿接せず、側道(歩道)のみに接する画地となったことは認め、原告所有地がもと大阪市内の商業地にあって、効用の高い土地であった事実は否認する。

4  同4・5について

(一) 本件事業の道路拡幅に伴ない、街路構造の一部の変更がなされたとき、それによる沿道土地所有者の宅地の使用上の不便、利用価値の減少は道路工事による損失というべきであり、その補償の要否および範囲は専ら道路事業の一環として決定されるべきものであって、本件収用による損失として考慮すべきものではない。また、一般的に従前の道路に沿接することによって受けていた沿道土地所有者の利便は反射的利益というべきであるから、それが道路構造の変更により損われたとしても、沿道土地所有者において当然受忍すべきものであって、道路事業による損失としても補償されるべきでないこと、道路法七〇条一項の趣旨に照しても明らかである。

(二) 仮に収用による損失に該るとしても、一般に土地収用における損失補償の基礎となる価格評価は、一般的取引観念に基き客観的に算定されるべきものであって、単なる土地所有者の将来の利用意思等の主観的要素によって影響されるべきものではない。ところで、本件残地は更地の宅地であって、未だ特定の用途に供されているものではなく、仮に原告主張のような建設計画があったとしても、既にその後六年を経過した裁決申請時において未だ何らの利用もなされていない状況であれば、右建設計画のみをもって、本件土地の利用方法、形態が客観的、具体的に確定あるいは高度の蓋然性をもって予定されているとはいえないから、未だかかる計画は原告の主観的意図に留まるものというべきである。

(三) 仮に、原告主張のように、本件残地を自動扉展示場および事務所建設地として利用する予定であって、しかも右建設計画が主観的意思に留まらないとしても、本件残地につき、原告の主張するような効用減価は生じていない。

(1) 原告所有地は、従前南北の間口(一三メートル)において、巾員六メートルの道路の東に沿接していたが、本件事業施行の結果、右道路は巾員約三〇メートルに拡幅され、本件残地はその側道(巾員約三メートル)に接することになり、また前記土留擁壁が設けられても、右側道(歩道)を約四・五メートル進んで車道に出ることができる位置にあるから、本件事業施行の結果は本件残地の利用に殆んど影響を及ぼさないものである。

(2) 客足の利便についてみれば、従前の道路が前記のとおり幅員が狭いうえ、歩車道の境界を有しないのに比べれば、本件事業施行後の道路の方が、車両の通行量、駐停車の便益、通行人の安全性等のいずれの面からみても優ること明らかである。

(3) 輸送の適否についてみても、歩車道境界を有する道路においては一般に車両の歩道上の通行は禁止せられ、荷物の積卸しは車道の左側端に沿い行なわなければならないとされているから(道路交通法一七条、同四七条)、歩道上を車両が通行しうることを前提にした原告の主張は失当であり、また土留擁壁が設けられていなくとも、荷物の積卸しは約三メートルの歩道をはさんで行なわなければならないものであるから、土留擁壁が設けられた結果、前記のとおり歩道を通じて車道に達するのに約四・五メートルの距離があるとしても、その差約一・五メートルをもって輸送の便に著しい不利益を来たすものとはいえない。

(4) 本件事業施行の結果、大阪市の南北を貫通する延長一三三・九〇メートル、最大巾員四〇メートルの幹線道路が開通され、御堂筋とともに市内の交通網の要となったため、道路沿線の発展性は著しいものがあり、付近地の利用価値の増加とともに地価の高騰もみられ、右現象は本件残地についても妥当し、単に土留擁壁が設けられただけでは、近隣の発展性に何ら消長を来たさないものである。

第三証拠≪省略≫

理由

一  請求原因1の事実は当事者間に争いがない。

そして≪証拠省略≫によれば、次の事実が認められる。

原告所有地は、地下鉄三号線(四ツ橋線)肥後橋駅の北出入口の四方約五〇〇メートル、土佐堀川に架せられる常安橋の北約五〇メートルの地点に所在し、南の土佐堀川、北の堂島川に囲繞された通称中之島の地域内にあって、従前巾員六メートルの道路にほぼ等高に接する、南北の間口一三・七メートル、東西の奥行約二一メートルの矩形画地であって、建築基準法上商業地域、防火地域に指定され、付近一帯は日本式建物が残存するものの、東方に中之島オフィス街を控え、オフィス街の裏通り的環境を形成するものであったところ、本件事業によって、前記従前の道路は拡幅されて車道巾員二四メートル、両側歩道約三メートル(側溝を含む)の歩車道分離道路(加島天下茶屋線)が造成され、同車道は常安橋にかけて上り勾配となり、そのため歩車道の境界には、本件残地の北三・九五メートルの地点から、本件残地の南方約二五メートルにある階段の西側までコンクリート製の土留擁壁が設置されることとなった。その際、原告所有地は、従前巾員約六メートルの道路に接面していた西側部分を収用され、本件残地は、盛土により前記歩道にほぼ等高に接する南北の間口一三・七メートル、東西の奥行約一八メートルの矩形画地となり(本件残地が歩道に接する画地となったことは当事者間に争いがない。)、その後、付近一帯は第八種容積地区の指定を受けて、東方および南方より鉄筋コンクリート造の中層ビルディングが多数建造されつつあり、将来オフィスビルディング街として発展の様相を呈してきている状態である。

本件残地の周辺の状況は、右車道は本件残地前において傾斜に伴ない歩道より九センチメートルから七八センチメートル高く移行し、その間歩道面九五センチメートルから一・五七メートルの前記土留擁壁があり、土留擁壁と歩道の間には巾員一七センチメートルの側溝が設置され、また本件残地の間口中央辺から西へ二・三一メートルの歩道上には街灯が、その四・九四メートル北には電柱がそれぞれ建てられ、本件残地の南方約二五メートルのところで、右歩道は行詰りとなり、同所にある階段によって南の道路に接続しているというものである。

二1  原告は、まず本件事業施行の結果、本件残地が株式会社住田式自動電機製作所の商品展示場および事務所兼居宅の建物敷地としての効用価値を喪失したので、右相当分が補償されるべきであると主張するから、判断する。

≪証拠省略≫によれば、原告は昭和三四年ころ、北隣の株式会社朝日工業社に原告所有地を材料等の置場として賃貸したが、その後右土地を商品展示場および事務所兼居宅として使用すべく、昭和三六年四月五日建築物確認申請をなし、同年五月二日右確認を受け、約半年後基礎工事に着工したものの、本件事業の結果、従前の接面道路が高架化されるとの噂に接して、工事を中止し、再び右会社に材料等の置場として貸し、収用裁決当時なお更地のままにしていたことが認められる。

ところで本件事業について、昭和四二年二月二七日土地細目の公告がなされたことは前記のとおりであるから、本件土地収用による損失の補償については、土地収用法の一部を改正する法律施行法(昭和四二年七月二一日法律第七五号)三条により、昭和四二年法律第七四号による改正前の土地収用法(以下単に「法」という)が適用されることになるが、同法は、収用する土地に対しては、近傍類地等の取引価格等を考慮して、収用委員会の裁決の時に算定される相当な価格をもって補償しなければならないと規定する(法七一条、七二条)。そして右の相当な価格は、その土地の客観的交換価値によって判断されるべきであって、土地所有者の主観的事情により左右されるべきではない。それ故、原告が単にその所有地を前記のような方法で利用する計画を立てていたというような事情は、土地の価格算定に当って考慮されるべきものではない。このことは、原告所有地が全部収用される(これにより当然右計画の実施は不可能になる)場合におけるその土地の評価についても、一部収用によって右計画の実施が不可能になった場合における残地の評価についても、いえるのである。したがって原告の右主張は理由がない。

なお、土地所有者の進めていた土地利用計画の実施が、収用のため不可能になり、これによって所有者が損失を受けた場合、その損失が通常生ずべき性質のものであれば、補償されなければならない(法八八条)が、原告においてそのような損失を受けたことは主張立証しないところである。

2  次に原告は本件事業の施行によって、本件残地につき、一般的利用価値、収益性が低下したと主張するので、この点について判断する。

土地の被収用者は収用の前後においてその財産額に増減がないように補償されるべきであるから、当該収用の事業の施行の期待による土地価格の騰貴すなわちいわゆる起業利益も土地の補償価格の算定にあたり考慮されるべきであり、また一部収用において、当該事業施行の結果、残地の価格が低落した場合、そのいわゆる起業損失も、間接ではあるが、収用に起因する損失というべきであるから、補償されるべきである。そして法九〇条に明定するとおり、事業の施行によって残地の価格が増加し、その他残地に利益が生ずることがあっても、その利益を損失と相殺することは許されないから、残地の損失の判定にあたっては、右のような起業利益を斟酌することはできないといわなければならない。

ところで前記認定事実、検証の結果および各鑑定結果によれば本件残地の前面に設置された土留擁壁に妨げられて、自動車が車道から歩道を横断して本件残地に出入することはできないこと、もっとも土留擁壁は本件残地の北三・九五メートルの地点までしかなく、しかも歩道の巾員は二・七二メートル(但し、本件残地とその正面に在る電柱との間隔は二・一五メートル)あるから、自動車は右擁壁の北端を迂回して歩道を通行すれば、車道から本件残地への出入が可能なようにみえるが、自動車の歩道上の通行は横断等の特別な場合を除き一般に禁止されているので、それもできないこと、本件残地は車道に沿接していないので、自動車による荷物輸送については、自動車を車道の東端に止めて荷物の積卸しと本件残地までの運搬をすることになるが、本件残地正面の車道に止めると(運搬距離は約三メートルである)擁壁に妨げられて右作業が困難であり、したがって擁壁の北端附近に自動車を止めて作業するほかなく、結局四メートル以上の距離を運搬しなければならないことになること、このようなわけで、土留擁壁の設置によって、本件残地の利用価値は低下したことが認められる。しかし土留擁壁の有無に拘らず、歩道上の車両の運行は一般に禁じられているから、歩道の南方向が行詰りになっていることは輸送上の便益性に影響を及ぼすものではなく、電柱、街灯の存在によって荷物の積卸し等の作業に支障を来たすことも認め難いから、この点に関する原告の主張は採用するところでない。

一方、本件残地につき本件事業によって、嫌悪施設等の接近条件に従前の状況と比べて顕著な差が生じたことも、また交通条件、近隣の発展性の面で収益性が低下したことも、これを認めるに足る証拠はない。この点についての鑑定人小野三郎の鑑定の結果は採用しない。

以上の認定事実によれば、本件残地は専ら土留擁壁の設置によって利用価値が減少したものであり、右利用価値の減少はひいて交換価値の低下をもたらすものと解さられるから、右は本件収用によって残地に生じた損失であって、起業者である被告は右損失を補償しなければならない。

ところで本件残地が前面に土留擁壁等がなく直接歩車道分離道路に面している場合に比べて土留擁壁が存在することにより、その交換価値が減少する場合を、木口勝彦鑑定は一六パーセント、貝原寿一鑑定は七・五パーセント、小野三郎鑑定は四〇パーセントとそれぞれ評価している。

以上の事実を総合判断すれば、本件残地に生じた損失は、本件残地の土留擁壁を考慮しない価格に対し、一平方メートル当り一二パーセントの減価であるとみるのが相当である。

そして、収用裁決額一平方メートル当り一五一、四〇〇円が右価格に当ること、本件残地の実測面積が二四五・二二平方メートルであることは、当事者間に争いがないから、本件残地の損失は四、四五五、一五七円をもって相当とする。

(算式) 151,400円×0.12×245.22m2=4,455,157円

なお、右計算の基準となった本件残地の価格が、残地を歩道面と同じ高さまで高上げする以前のものであることは弁論の全趣旨によって明らかであるから、右損失は前記盛土費用とは別に補償されなければならない。

そして起業者は収用の時期までに補償金の払渡をしなければならないから、収用の時期の翌日から、補償金の払渡につき遅滞に陥るものというべきである。

三  以上の次第であるから、原告の本訴請求は、四、四五五、一五七円およびこれに対する収用期日の翌日である昭和四三年四月二一日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度において理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条を適用し、仮執行の宣言は相当でないのでこれを付さないこととし、主文のおり判決する。

(裁判長裁判官 石川恭 裁判官 飯原一乗 門口正人)

〈以下省略〉

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